吉野の昔話
〜語り継がれる人々の想い〜

烏の塒屋山

吉野の三茶屋と大宇陀の牧とのちょうど境に針のようにとがった山があります。
今は「烏の塒屋山」って呼ばれてるんやけどな、昔は「塒屋山」って呼ばれててんて。
なんで"烏"ってついたんか…それはな…

むかし むかし この針のようにとがった山には、たくさんの鳥やケモノ達がいたんやて。
朝日が昇ると どこかへ行って、日が暮れる頃になるとどこからともなく鳥やケモノ達が帰って来る。
それを見ていた村人達が、いつからかこの山のことを塒屋山って呼ぶようになってんて。
塒屋ってな、"ねぐら"て言う意味なんやて。

ある日のこと
夜明け頃なはずやのに、いくら待ってもおひさんが出てこんかってな、村人達は何か悪い事がおこるんやないかって心配になってな、神さんに「早くおひさんが出ますように」っておいのりしたんや。
あんまり長いこと おひさんがあたらへんから、だんだんと寒さがひどくなって、皆、ふるえながら 神さんにおいのりしてたんやけど、待てど暮らせど おひさんは出てこんかった。

いったい どのくらい時がたったんやろうか…。

静まりかえった暗闇の中から東の空に向って「カァー カァー」「カァー カァー」と烏が鳴いたんやて。
するとな、東の空から ようやくおひさんが顔を出してんて。

そんなことがあってから、この山を「烏の塒屋山」って呼ぶようになってんて。

なんでも、このおひさんを起した烏は、神さんがつかわした伝説の"三本足の八咫烏"やったと言う説もあるんや。

むかし むかしの吉野のお話「烏の塒屋山」針のようにとがった山。近くを通ったらさがしてな。